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県美移転のおぞましさ

県美移転のおぞましさ

 昨年11月に突然持ち上がった県美術館の移転問題が県政の大きな焦点の一つとなっています。今年の1月、2月は宿泊税と県美移転が、村井県政の二大民主主義破壊として、県民的な批判を浴びました。宿泊税は新型コロナウイルスの深刻な影響による旅行・観光業界の打撃に焦点が移り、いったんストップとなりました。新聞記者から裏事情など聞くと、どうも最大与党会派の自民党県民会議が割れて、否決の公算が強まったようです。いずれにしても、徴税の当事者となる宿泊事業者を先頭に、強力な反対運動を展開した県民の世論と運動の成果です。実は、この宿泊税以上におかしい(一応宿泊税には観光予算を確保するという目的があった)のが、県美(県美術館)移転です。私ども共産党から言わせれば、移転という大義名分・説明のすべてが間違った認識から出発していることです。その詳細はあとで展開したいと思います。
 党県議団のコラムに県美移転問題を解説しようと、随分前から準備をしていました。しかし、なかなかタイトルが決まりませんでした。これだと膝に手を打ったのは先週後半でした。
 宮城県芸術協会は1月28日に現地での施設維持と県民への意見聴取を求めて県に要望書を提出しましたが、芸術協会の雫石隆子理事長は、自らが主幹を務める川柳宮城野社の機関誌『川柳宮城野』3月号の巻頭言で以下のように、今回の県美問題に触れました。
 「最近、地元紙などで話題になっているのは美術館の移転問題である。一月末に、宮城県芸術協会を代表して、県への要望書を提出。著名な建築家である前川国男氏の設計による美術館の利活用、地元の芸術関係者を審議に入れることを訴えた。東日本大震災から十年目を迎えることで、国の支援にも一定の線引きがあるとはいえ、事を急ぎすぎる危うさがある。支援を当て込み箱物を集約化、新しい箱造りをするとはおぞましい。価値あるものを保存し、しっかりと後世に引き継ぎたい」
 まったく、私ども同意見です。川柳家らしく、今回の騒動の本質を「おぞましい」の一言で斬ってみせてくれました。かつて、川柳家の時実新子さんは、阪神淡路大震災を詠み「1995年1月17日裂ける」と表現しましたが、この「裂ける」に相応する表現が「おぞましい」です。
 「おぞましい」とは、国語辞典を引くと、身ぶるいするほど嫌で嫌でしょうがないとか不快で不快で堪らないという感情が込められています。私どもがこの間に聞いた移転に疑問を持つ方々の声は、まさに不快感であり、嫌悪感です。だから、今回の県美移転コラムのタイトルは、雫石さんから借用させていただいて、「県美移転のおぞましさ」にしました。

「古いから壊す」と誤解しているのは村井知事自身、このままでは「張りぼて」とまで言った知事

 党県議団の大内真理県議は3月3日の一般質問で、「知事は移転に反対している方々を感情的に反発しているとか誤解していると言っていますが、どこが誤解していると思っていますか」と再質問しました。
 それに対する知事の答弁は、「古いから壊す」でした。どうも古いから壊すわけではないことを知事は強調したいようです。しかし、「古いから壊す」は移転に反対する方々が誤解して受けとめているのではなく、知事自身がそのように言ってきたことをまず反省的に見つめることからはじめていただきたいと思います。
 いまからその証明として、知事が記者会見で県美移転について、どのように触れてきたかを見てみたいと思います。

 知事が記者会見ではじめて県美移転に言及したのは、昨年の11月25日の記者会見でした。もっぱらリニューアルにもお金がかかること、県民会館との親和性と集客における相乗効果を強調しました。
 「美術館につきましては、聞いたところリニューアルに相当な経費がかかります。非常にしっかりとした建物ですけれども、築30年以上たちましてリニューアルするだけで50億円以上のお金がかかるという見積もりでした。(以下略)」(2019年11月25日、知事記者会見より)
 次に、今年の1月6日の記者会見では、移転の理由として老朽化をはっきりあげています。
 「今回の取りまとめた内容を読んでいただくと、別の場所へ移す理由が明記されていますので、ご理解いただけると思います。財政的な理由、また建物が非常に老朽化しているという理由、新しい県民会館との親和性の問題という理由から移すことになりますので、その説明をすれば次第にご理解いただけるようになるのではと思います」(2020年1月6日、知事記者会見より)
 さらに、1月27日の記者会見では、いかに古く老朽化しているかをとくとくと以下のように語っています。
 「かなり古くなりました。築38年、40年近くたった施設ですから、躯体をかなりきっちり整備してリニューアルして、そしていろいろ要望を頂きました。所蔵品を見える化したいという要望がありました。皆さん行ったことないかと思いますが、そこにちょっとしたホール(講堂)がありますが、入ってもらったら分かりますが、湿気でカビ臭いです。今は頻繁に使われていない状況です。それを大改修することになると、非常にお金がかかります。そして、もうかなり古くなっていますので、ある程度将来使える期間が限られてしまっているということもあり、あのまま改修するのに大変なお金をかけても、使い勝手をよくはなかなかできません。どうしても張りぼてのようになってしまいます」(2020年1月27日、知事記者会見より)
 このように、古くなったから移転ということを知事自身が解説してきたではありませんか。あと10年、20年したら使えなくなるという「脅し」の凶器を使ってきたのは知事自身であることをはっきり見て取ることができます。

 これに対する反論としては、2月27日の本会議で自民党県民会議のわたなべ拓県議がおこなった一般質問です。わたなべ議員は現在の県美術館は100年持つことを専門家の意見も紹介しながら、明らかにしました。この点は、3月9日付『河北』の「持論時論」で、県美術館の設計・監理に関わった大宇根弘司氏が「手入れ次第で100年もつ」のタイトルで書かれています。大宇根氏は以下のように言ってます。
 「そもそも、前川先生の事務所では現代建築が汚れやすく、傷みやすいことに重大な関心を払ってきました。宮城県美術館はそうした努力の成果の最終形の一つで、コンクリート躯体は健全です。当たり前の手入れをすれば、あと20年はおろか、50年、あるいは100年も大丈夫だと私は確信しています」

 あと10年、20年したらどうしようもなくなるという認識の知事と専門家の大宇根氏があと100年は持つという意見、もうどちらに軍配があがるかは明らかではないでしょうか。だから私たち日本共産党は、県美術館を古くなったから移転対象だとして、集約化の対象にあげること自体が不当な扱いであり、したがって私たちは移転した場合と現地改修の場合の財政的メリットを、4200万円かけて調査するという新年度予算にも強く反対します。もともと移転・集約の対象にあげること自体が間違っているのですから、まずは移転撤回しかありません。

 県美移転の理由について、先に紹介したように、知事は1月6日の記者会見で、3つの理由をあげました。①財政的理由②老朽化③県民会館との親和性。そして、このうち②の老朽化については、経年劣化はあるが、当たり前の手入れをすれば、建物自体は100年は大丈夫であり、すでに論拠は崩れています。
 それでは①の財政的理由についてはどうか。実は、2月定例会の一般質問に答える形で、知事は異例の「答弁」をしました。それは先にあげたわたなべ拓議員の一般質問に答える形で、知事が県議全員に「ぜひメモをとって欲しい」と言いながら、ざっくりと試算シミュレーションを示しました。その概要を以下にあげておきます。

知事が示した財政的メリットとは

 現在の国の支援制度(公共施設などの整備のための地方債活用例より)によれば
 (美術館は現在地でリニューアル・増設、県民会館は現地建て替えの場合)
 ・美術館のリニューアル分の国の補助は事業費全体の36%、増築分は補助なし
 ・県民会館の現地建て替えの場合は補助なし
 (宮城野原に集約化・複合化し面積を狭くする場合)
 ・美術館の新築分には45%の国の補助がでる
 ・県民会館の大ホールなど既存部分には45%の補助、中小ホールなど新規分はゼロ
 (あきた芸術劇場は211億円、青森県立美術館は約100億円なので、仮に県民会館が200億円、美術館が100億円と想定すると、今の国の制度のもとでは以下のようになる)
 ・移転なしの場合は、美術館のリニューアル分を約30億円、増設分約30億円とすれば、国の補助が出るのはリニューアル分10億円だけで、県民会館の現地建て替えにかかる200億円には国の補助はないので、260億円かかるうち、250億円が県の負担となる。
 ・一方、移転した場合は、美術館にかかる100億円のうち45億円の国の補助があり、県民会館の200億円のうち仮に大ホールなど既存部分を150億円と考えると、その部分に45%の補助があり、新規の50億円分への補助はないが、トータルで両方の新築でかかる300億円のうち、110億円分が国の補助が出て、県の持ち出しは190億円で済む。
 ・したがって、移転した方が約60億円県費が浮く。

 ※ここで、出てくる36%とか、45%という補助率について、少し解説しておきます。国の公共施設などの整備にかかる補助制度を見ると、長寿命化事業と全体をとらえ、その全体事業費の90%が起債を起こすことができます。その起債分のいくらを国が面倒みてくれるのかで、補助率に違いが生じます。まず、集約化・複合化する場合は、50%を国が交付税措置するとされています。全体事業費でみると、50/90ですから45%となります。それ以外の長寿命化の場合は財政力に応じて30~50%を国が交付税措置するとされています。例えば、30%の場合は、30/90ですから27%、40%と想定すれば40/90で36%となり、知事が説明したのは40%に設定して36%としました。なお専門家のところでは、30%を使い、美術館をリニューアルする場合は27%という数値を使っている場合もあります。
 ※正確な議論をするために、知事が解説したもう一つの経営的理由についても記しておきます。知事は移転による集客効果がある事例として、美術館のバリアフリー化についてあげました。現在の美術館は奥にエレベーターが一基あるだけで、車椅子対応には不適であること。そこからユニバーサル・デザインをするなら、移転新築の方が得策であることが強調されています。これを教育長なども突然移転のメリットとしてあげています。この点については、あとでどうとらえるべきか言及したいと思います。

美術館は年月とともに熟度や深みが増す 知性や理性はお金に換算できない価値がある

 さて、この知事の「財政メリット」論について、正面から反論したのが自民党県民会議のベテラン・畠山和純議員です。畠山議員は3月5日の予算特別委員会における総括質疑で大要、以下のように述べました。
 「美術館について、私はどうしてもこの計画には賛成できません。理由は一つです。文化・芸術性とか、理性とかいうものは、年月を重ねていけばいくほど熟度を増して深みが出てくるものです。今の県美術館がおかれているポジション、存在理由はとてもかけがいのないものだと思います。知事が、こうやったらお金がかからないんだとか、こうやった方が集客ができるとか、ああいう答弁を聞けば聞くほど、これ違うんじゃないかなと、そんな思いがだんだん強くなってきて、知性とか理性とかお金に換算できないものについて、知的財産というような存在をもう少し重く受けとめてもらいたいなと思います」
 畠山議員は言いっぱなしで、なぜか知事には質問しませんでしたが、私どもも畠山議員とまったく同意見です。
 先にあげた知事の説明も、国の補助をもらえるかどうかが焦点で、美術館の芸術的価値については一言も言及がありません。ですから、パブコメを寄せた意見の中には、自分は仙台市民・宮城県民・日本国民であり、税金がどう使われるかについて、県にとって有利かどうかのみの議論に違和感があるとの指摘もあります。
 残念ながら、県美移転を考えている方々の認識というのは、財政的メリット・デメリットを最上位において思考するのが特徴で、美術館に愛着を持つ多くの県民の感覚とかくも違うことをよく見ておく必要があります。

後から理由付けした「県民会館との親和性」

 それでは次に、知事が移転理由にあげた3番目、県民会館との親和性についてみておきましょう。この問題を考える時に重要なことは、今回の「移転騒動」が県民会館と美術館を一緒にして欲しいという声があって出てきたわけではけっしてないことです。どこにもそういう声がない中で、突然公共施設整備にかかる国の補助制度上有利だからと、まさに県庁組織の上から上意下達のように降りてきた方針なのです。だいたい県民会館と美術館を一緒にすべきという声も運動もいっさい聞いたことがありませんし、そんなことは県民誰一人考えていませんでした。したがって、県民会館との親和性というのは、移転「効果」を後から説明するために持ち出された、まさにためにする議論です。
 そして、この「親和性」論をもっともらしく見せるために、全国を探して引っ張り出してきたのが「他地方公共団体等における類似事例」です。長野県上田市のサントミューゼ、愛知県の愛知芸術文化センター栄施設、島根県のグラントワなど3つの文化センターと美術館を複合化した施設の事例を取り出し、あたかも集客力の相乗効果が期待できるかのように描きます。しかし、まちの規模も、歴史的背景も違う他自治体の例を持ち出しても、本当に説得力があるでしょうか。知事が説明するような、県民会館の前でビラをまけば、美術館にも来てくれるという説明は、想像の世界では成り立つのでしょうが、多くの県民はこういう「効果」論には胡散臭さを感じているのではないでしょうか。

知事が新たに持ち出した建物と美術品は別物論 そして移転こそリニューアル方針を生かす道という虚言

 以上見てきたように、知事が記者会見の場で公式に示した移転の3つの理由、①財政的メリット②老朽化③県民会館との親和性という論拠が説得力を欠く中で、最近持ち出してきたのが、「建物と美術品は別物」論と「移転こそリニューアル方針を生かす道」論の2つです。
 「建物と美術品は別物」論は、おそらく移転反対の多くが、歴史的に貴重な前川国男建築を残して欲しいと言っていることを逆手にとらえ、建物をどうするかは今後別にその存廃・利活用を考えるとして、中のコレクションはできるだけ多くの方々に見てもらえるように医療センター跡地に持っていくという珍説です。
 パブコメをはじめ多くの県民の意見は、建物と美術品を別物ととらえているわけではなく、周囲の自然環境と融和した建築物や空間と美術品とは一体的な鑑賞として考えており、建築物さえ残せば良いとは思っていません。先日も党県議団控室にある方から電話がありました。「昔、子どもとともに佐藤忠良館に行った思い出があります。美術館が移転するという話を聞いて、とても心配になり電話しました。ぜひあのままの形で残して欲しい」とおっしゃっていました。佐藤忠良作品は美術館の中に作品館をつくるという条件でいただいたもので、先に紹介した大宇根氏が、作品の配置空間も考えて増築されたのが現在のものと言われます。こういうものを別の空間に作品だけ持っていきさえすれば良いのだと、知事が本気で考えているとすれば、あまりにもその芸術的価値や先人の知恵に対して無知過ぎます。
 さらに「移転こそリニューアル方針を生かす道」論は、何をかいわんやです。例えば、リニューアル基本方針に至る経過の中で、基本構想がつくられていますが、そこで「美術館の強み」として4点が挙げられています。それは①良好な立地環境と合理性のある建築物②活動実績③充実したコレクション④いつでも・だれでも利用できるオープン・アトリエです。このように県美の強みの一番にあげられているのは良好な自然環境であり、リニューアル基本方針では、ここから文教地区の利点を生かした「国際性」が強調されるなど、基本方針の核心部分は、現在地での利点を生かしたものとなっています。これを一知半解で、自然環境以外の部分を引き継ぎさえすれば良いとし、移転した方がむしろ方針を生かす道などとつくりかえるのは虚言と言わざるをえません。

「心豊かになる」自然環境とのマッチング

 副知事をやり現美術館・館長の河端章好氏が『勾当台クラブ会報』(第168号、2020年1月25日発行)に寄せた「芸術に親しむ」という手記を紹介しておきましょう。
 「現在、美術館におります。…(途中略)年を重ねるにつれ、宮城・東北にゆかりのある作家の作品や洲之内コレクション・佐藤忠良氏の彫刻など収蔵品も充実してきましたし、年4回ほど特別企画展も開催しています。…普段とは違う時間・空間の中に身を置いては如何ですか。心豊かになること間違いなしです。ついでに、広瀬川の遊歩道など近隣を散歩しても良いですし、東北大学の植物園や青葉城址も近くにあります。ゆったりとお過ごし下さい」
 素晴らしい美術館へのお誘い文書です。まさに自然環境とマッチした現美術館の優位性がいかんなく紹介されています。知事はじめ県当局は、こういう感覚を大事に美術館問題を考えて欲しいと思います。そうすれば財政的メリットばかりを優先させる呪縛から解放され、もっと素直で純真な眼で実のある美術館の発展強化方向をとらえられるのではと思います。

知事が宮城野区の仙台医療センター跡地移転にこだわる深層

 ここでなぜ知事がこれほどまでに美術館移転にこだわるのかについて考察しておきたいと思います。そのためには、広域防災拠点整備がなぜ出てきたかまで遡って解き明かさなければなりません。
 宮城県の震災復興計画にも明記されていなかった宮城野原のJR貨物跡地に広域防災拠点を整備するという構想(300億円以上かけて宮城野原に防災拠点公園を整備する計画)がなぜ浮上したのか。もっと言えば、震災が起こる前日、前々日まで所管の建設企業委員会で、利府の総合運動公園に広域防災拠点を整備するための調査費(約1千万円)が計上され可決(この予算は震災のために未執行)されていたのが、なぜ突然知事の鶴の一声で変わったのか、ずっと謎でした。
 この謎を解いたのが、2016年9月26日付『河北新報』の1面に掲載された「三者思惑一致の『最適地』」の報道でした。これによると2012年夏に村井知事が仙台医療センターに入院していた妻の見舞いに行った際に、仙台医療センターの建替え計画を聞きつけ、知事が「現地建替えは不便でしょう。そばにある県の宮城野原総合運動場に来たらどうですか」と土地の等価交換を提案したのが、そもそもの始まりでした。JR貨物も10年前から移転構想があったが財政的理由で頓挫していましたので、そこに広域防災拠点をつくれば、緊急医療体制も近くにあるし、三者がめでたくおさまるという読みでした。
 こうして震災以前には土木部有志が広域防災拠点を県内のどこに置くかの検討をした際に、もっとも評価点が悪く不適の地とされた宮城野原が、知事の創造的復興の象徴としての広域防災拠点にされた途端に、最高の評価点に変更されるなど、非常に不可思議な展開がおこなわれました。いまもJR貨物の移転補償のために県民の税金が限りなく投入されています。
 阪神淡路大震災という、活断層が動く直下型地震の恐ろしさから、山形県などでは活断層の上には公共施設を作らないと決めていますが、宮城県は違います。宮城野原の近くに長町利府活断層があっても、仙台医療センターという国の医療機関も免震構造でもたせるとなっており、問題ないというのが今の宮城県のスタンスです。熊本地震などで活断層の怖さがあらためて示されましたが、おかまいなしに突っ走る姿勢です。
 こうして生まれたのが、県有地となった仙台医療センター跡地です。結局知事マターの土地だったわけです。そこに県民会館をという議論は、「県民会館の整備のあり方に関する有識者会議」で議論されて煮詰まっていたのですが、いかんせん単独では国の有利な補助制度が使えないこと、跡地の県有地の面積に余裕があることから、急きょ美術館との抱き合わせが浮上したというのが真相です。
 今回の方針案が集約・複合化された最大の動機は、仙台医療センター跡地の面積が約54,530㎡に対し、県民会館の現施設面積が約12,470㎡であり、いまより大きい県民会館を移転改築してもなお面積に相当程度の余裕があることから、宮城県美術館(現施設床面積約15,203㎡)と宮城県民間非営利活動プラザ(みやぎNPOプラザ)(現施設床面積約1,262㎡)が急きょ浮上したのです。すなわち余裕ある県有地があったこと、県民会館の再配置がかねてからの課題であったこと、そして国の公共施設長寿命化政策に集約化・複合化という有利な補助制度があったこと、これらが重なりあって出てきたのが、美術館移転です。他自治体の事例や相乗効果論などはすべて後付けで「弁解」しているにすぎません。

美術館のバリアフリー化はハード・ソフトの両面で

 美術館のバリアフリー化やユニバーサルデザイン化について触れておきます。かつて党県議団は情報政策課との間で宮城県の「ICT利活用」について議論したことがあります。私どもは岩手県の美術館などで行われているような視覚障害者向けの音声ガイドを宮城でも導入することを求めたことがあります。その時の担当課長の回答はこうです。
 「学芸員さんからも障害者への対応がこのままではまずいという意見があり、何とかできないかとの相談がある。これについては、現在検討されているのは、入口でスマホを持っている方にはアプリを入れてもらい、展示物に近づけば自動で音声ガイドが流れる仕組みがつくれないか、常設展も絶えず変化しているので、新しい展示物が設置された場合にはパネルだけ入れ替えればその音声ガイドに対応できるようにできなければいけなく、そういう技術的な対応ができるかどうか検討している」(2016年5月31日、県議団控室で当時の課長からの説明)
 このことからもわかるように、ソフト面や予算上の措置で、相当の改善ができるのです。もちろん建築構造上から車椅子対応に困難があるのなら、介助を含めた人的支援も必要になるでしょう。バリアフリー化についてはハード・ソフトの両面から検討されるべきで、移転によって単純に解決する問題ではありません。

現状では絶対に通らない移転案 県議会の過半数は移転反対・慎重派

 パブリック・コメントは221件あり、個人が209件、団体が4件、その他無記名が8件でした。そのうち賛成意見は3件のみで、あとは移転反対・慎重意見でした。この際と思い、氏名・住所を消した上でパブコメで出された全部の意見について開示を受け、党県議団は子細に検討しました。その結果、多くの方々が現美術館の自然環境および建築物の優位性、活動実績、豊富なコレクションの意義と鑑賞における現在地での素晴らしさについて、共通して指摘し、芸術的視点を欠いた今回の移転案に強く抗議・反対していることです。あまりにも理不尽で勝手すぎる移転案であることを憤りを持って指摘しています。
 またこれはある記者情報ですので、私どもでは確認しようがありませんが、美術館問題で取材を重ねた記者の感触として、「おそらく部長級以上の過半数が移転に疑問を感じている」との話があります。これはそれほど理不尽な提案が今回の県美移転だということです。
 県議会の状況ですが、昨年の11月議会、今年の2月議会を通じて、県美移転に賛成だと公然と主張している県会議員はだれひとり見たことも、聞いたこともありません。今年の2月19日に、県議会棟議員応接室で開かれた県美移転に反対する署名1万7千余の陳情書名を県議会議長に提出する際に集まった県議は、過半数を超えていました。まさにこの問題は、超党派で県の横暴な提案と対峙しているのが状況です。県議会が賛成と言わない限り移転方針は決まらないのですが、この状況でいくら強行しても県議会を通ることはないでしょう。ただ心配なのは、財政的メリットがあるかどうかくらいは検討させて欲しいという形で、ハードルをさげて、場合によっては移転を撤回し現地リニューアルもありなんだからという方向でずるずるひきずっていくことです。その辺の予兆がどうもあらわれ出していないか危惧しています。何度も言いますが、私たち日本共産党県議団は、県美術館を移転対象にして検討の俎上にあげること自体が不当なので、今年度予算に計上されているコンサルへの委託費4200万円と、さらに移転新築する際の「PPP・PFI導入可能性調査費」の予算出動を可能とする債務負担行為の800万円についても反対します。

都道府県立美術館の現状からみえてきたもの

 最後に、今後の展望と課題について触れておきましょう。
 ここまで読んでいただいた方のために、本邦初、オーバーに言えば日本で唯一の各都道府県美術館の決算・予算の資料を紹介したいと思います。これは昨年末に県議団で議論し、県美問題を考えていく際に、移転反対は当然だが、これを機会に美術館のあり方や今後の発展強化方向についても探究していく必要があるとなりました。その一助として、宮城県議会の政務調査課にお願いし、都道府県立美術館の現状について、その館数、決算・予算状況などを把握することにしました。聞いてみたら、日本中探してもそのような一覧はないというこで、政務調査課が47都道府県に全部照会をかけて調査してくれました。それが下記をクリックすればご覧いただける資料です。(45都道府県から回答あり、ただし東京都からは非公表なので配慮をということで、今回は黒塗りにさせていただきました)

都道府県立美術館の決算・予算一覧表

 回答から見えてきたものについて、第一は約3割が複数の美術館を持っていることです。回答があった45都道府県立美術館のうち、2館以上を有しているところが14都道県あります。第二は、宮城県の美術館にかける予算は東北最低、全国的にもけっして多くないことです。
・予算規模を比較するために、各都道府県の標準財政規模を出し、令和元年度歳出予算の比率を比較しました。
・その結果、東北5県(山形県には特殊な歴史的経緯があって、民間が財団をつくり設立・運営、県や山形市はそこに財政支援している)で比較すると、以下の通り最低水準

	(標準財政規模に占める美術館予算の割合)
	青森県=0.19%	岩手県=0.16%	宮城県=0.09%	秋田県=0.11%
	福島県=0.11%

・次に、回答が寄せられた45都道府県の美術館の予算割合を算出したところ、標準財政規模の0.1%以上は以下の26都県にのぼることが判明した。

	青森県=0.19%	岩手県=0.16%	秋田県=0.11%	福島県=0.11%
	茨城県=0.28%	群馬県=0.14%	(東京都=0.15%) 新潟県=0.21%
	富山県=0.24%	石川県=0.11%	福井県=0.11%	山梨県=0.19%
	岐阜県=0.62%	静岡県=0.10%	兵庫県=0.10%	和歌山県=0.17%
	島根県=0.17%	広島県=0.10%	山口県=0.15%	香川県=0.19%
	愛媛県=0.10%	高知県=0.20%	佐賀県=0.12%	長崎県=0.10%
	熊本県=0.16%	大分県=0.25%

 要するに、もっと県美術館に予算をと言いたいと思います。こういう点を不問にして、ただ移転による県の財政負担の面からだけ、美術館を論じるのはおかしいと思います。

今後の展望として、検討に値する案について

 まずは芸術的・文化的視点を欠いた美術館の移転案は撤回すべきです。その上で、今後について、フリーハンドで希望的展望を語れば、資料でも見たように、美術館を複数持っている県もあり、現美術館ひとつにこだわる必要はないと思います。これを言うと、おそらく知事サイドは、人口減少社会に対応するために公共施設の集約化・複合化を進めている時にとんでもないと反論されると思いますが、そこは芸術や文化をどう考えるかの問題だと思います。
 そうした方向がすぐには無理だとしても、移転に反対・慎重を唱える方々の一部にある現県美術館を仙台市に移管し、県民会館と抱き合わせでつくる新しい美術館はそれとして現代アートをふんだんに取り入れた県美術館としていく提案は、ある意味で積極的な面があり、検討に値する案だと思います。今の前川国男氏の建築物も「アリスの庭」も「佐藤忠良館」もそのまま後世に残すのです。確認したところ、国の45%の交付税措置をもらえるのは、現美術館を壊す(解体)か移管するほかないそうです。県が別目的で転用する場合は不可とのことです。博物館や国際センターなどを持ち、文教地区として自然と合体させた地域づくりを進める政令市仙台の今後の方向としてもおそらく市民的にも歓迎されるのではないかと思います。そして、新しい県美術館にはギャラリーホールをはじめ、全国の先進的美術館の利点をおおいに取り入れた美術関係者の知恵や創意をたっぷり集めた新しい美術館を模索するのも一つだと考えます。これは現県美術館を将来にわたり発展的に生かしながら、時代のニーズに合わせた新しい美術館についても県民的総意と知恵でつくりあげていくという、文字通り文化・芸術が花開く宮城県をつくっていく道ではないかと思います。
 私ども党県議団は、移転に断固反対ですが、将来展望としては美術館のより発展方向についても、真剣に議論を重ねています。(文責:事務局・齋藤)

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